2013年2月28日木曜日

Gladiatori会

ふうかさん、かろくさんと。いつも様々なゲームをプレイできるので、実にありがたいのです。


剣闘士(Gladiatori)



イタリア・ロシアゲーム会で私の準備が間に合わなかったので次回まわしとなった作品。イタリアはGiochix.itの2012年新作で、デザイナーはRio de la PlataやThe Forgotten PlanetのMichele Quondam。

題名のとおりプレイヤーは剣闘士となって殺しあうのだが、自分のキャラクター能力はカードデッキからなっており、手番でカードをプレイしてボード上のフィギュアを行動させるというちょっとアメゲーぽいシステムを採用している。キャラがデッキということは当然プレイ前のデッキ構築要素があるわけで、これもまたアメリカ的だ。もともとこのデザイナーはOne More Barrelに端的に見られるようにいわゆるハイブリッド的な特徴を持っていたのだが、ここんとこユーロに舵をきっていた印象があった。それがまた逆方向にきられたようだ。

キャラ別デッキを持って戦うとなると特殊能力ばりばりの必殺技の応酬を予感させるが、1戦やってみた感じはもっと地味で繊細で、勝利点をこつこつと積み重ねていく感じだ。明らかにアメゲー文脈の系譜に連なるものでありながら、プレイ感はそのステレオタイプから乖離している。ヌーヴェルヴァーグがアメリカB級映画の影響を受けながらも、その文法摂取においてズレが生じたことにより新たな映像が生み出されたように、というのは言い過ぎだろうが、恐らく魅力的なゲームはこうしたズレが顕著な場所から出てくるのだろうし、だからこそドイツでもアメリカでもないイタリアやロシアやポルトガルやフィンランドが「面白い」のだろう。もちろんゲーム自体の完成度は別であり、あくまで可能性の話にとどまるけれども。しかし魅力とは可能性のことなのだ。


怪しげな能書きはこのへんにしてゲーム内容に移ろう。前述のとおり各キャラはカードデッキで構成される。ターン最初にプレイヤーたちは自分のキャラデッキから任意枚数を選択し手札とする。残ったデッキは山札として置いておくのだが、戦闘で自キャラがダメージを受けた場合、この山札から受けたダメージに相当するカードを除外しなければならない。山札が尽きれば当然死亡=敗北である。大量のカードを手札にすれば戦闘力は強くなるがダメージには脆弱となってしまうわけで、この基本メカニクスを聞くだけでなんか面白そうだと思えるんじゃないだろうか。私は結構わくわくした。

カード内容の説明等は煩瑣になるので避けるが、基本は4種類あるアクションカードから1枚をプレイしてアクションを行う、また攻撃されたときもアクションカードを1枚プレイしてリアクションを行う。どちらの場合も追加カードを任意枚数出すことが可能で、これによって攻撃力/防御力を高めたり、特殊能力を発動させたりする。そしてプレイは基本的に裏向きであり、カード相性などもあるので読み合い要素が強い。

カードにテキストはなくアイコンだけだが、アイコンの意味はルールを見ないと全くわからない。また、とるアクションによって攻撃力増幅の方法が異なったり、あるアクションでは回復不可だが別のアクションでは回復可能なステータスがあったり(これだけなら普通だが、とにかく解り難いのだ)、口頭インストだけでは記憶不可能なのでサマリー必須だ。逆を言えばサマリーさえあればなんとかなるとも言えるのだけど。どうも変に複雑で、その複雑さがゲームのなにに貢献しているのかが解りづらいため、デベロップ不足なのではないかと言いたくもなるのだが、前提としてやり込みゲームであるのは明らかなので、何度もこなせばまた違ったものが見えてくるのかも知れない。

ゲームは6ターンで終わり、勝利点勝負になる。もしくは自分以外の全員を殺せばそこで勝ちだ。勝利点は「攻撃すること」自体で得られ、その攻撃でダメージを与えればその分の勝利点ももらえる。特徴的なのが「誇り高い戦闘」がテーマとなっていることで、後ろから攻撃したり敵から逃げたりなどすると勝利点がひかれてしまう。後ろから攻撃すればダメージが通りやすくなるので、これは当然「卑怯者プレイで6ラウンド以内にぶっ殺す」か「正統派プレイで生き残り、勝利点で勝つ」かの2択ゲームではないかと思ったのだが、卑怯技を駆使しても1人も殺せなかった。正統派の削り合いを地味に繰り返しながら、勝利点レースを行うのが主眼なのだろう。


繰り返すがこれは「やり込み」を前提としているゲームだし、最も機能するのは2陣営戦だろうので、どうにも価値的なことは言いづらいのだが、第一印象を率直に述べれば、BGGの評価コメントのことばを借りて、"Good Concept, Bad Mechanic"と言わざるを得ない。だが一番の問題は、このマニアックと言えるゲームをやり込むようなプレイグループが日本のどこに存在するのかという、極めてエージェンシャルな問題だろう。


ミュータント・ミープルズ(Mutant Meeples)


基本はハイパーロボット。だがロボットならぬミープルに「1歩斜め移動できる」とか「2マスジャンプできる」だとかの特殊能力を加えている。おまけに勝利点を重ねるごとに使えるミープルが減っていくという仕様のおかげで、上級者と初級者とが同時にパーティゲーム的に楽しめる作品となっている。私のようなハイパーロボット嫌いのひとにこそおすすめできるが、つまりは負けていたらハイパーリーチ棒や牌交換が得られる麻雀のようなものなので、ガチなひとは避けたほうがよろしいかも。


スペース・ステーション(Space Station)


スウェーデンのFryxGamesのエッセン2011作品。これはコンポーネントを改良したエッセン2012発売の第2版。

5色のカードを自分の場に並べて宇宙基地をつくっていく。もちろんカードには特殊能力があり、建設(プレイ)費を安くしたり、ワーカーを生産したり、ワーカーを置くことでなにごとかが行えたりする。使い捨てのイベントカードもあり、これは攻撃色が強い。各ラウンド終了時、各色プレイ枚数で1位のプレイヤーに勝利点が与えられる。

というわけで結構よくあるタイプのゲームではあるのだが、コンパクトにまとまっていてサクっと終わるので、楽しいものに仕上がっている。直接攻撃が多くマルチ要素が強いところは好みが分かれるだろうが、私はこの日一番気に入った。あれだ、ドゥーム向きだ、これは。

添付の日本語訳には誤訳があり、「勝利点は各色1位がその枚数分」ではなく「各色1位に1点ずつ、最終ラウンドのみ2点ずつ」なのでご注意。


参った、侵略だ!(Oh no...Invasion!!!)


絵がかわいい協力ゲームである。難度はかなり低めで、初回でクリアできた。……他に書くことが思い浮かばない。



なんか今回の感想はネガティブ寄りな気がするが、プレイ中はどれも実に楽しかったのだ。ゲームは面子というのは「それを言っちゃあおしめえよ」なのだが、しかしやはり真実なのだよなあ。またよろしくお願いします。

2013年2月20日水曜日

ロビンソン・クルーソー会とか

たまってるのが多いので簡潔にいくのです。
3日分をまとめて。


メイジナイト・ボードゲーム(Mageknight Boardgame)


タナカマさん、ヒガさんと。インスト役を仰せつかったが、半年以上間が空いているため、私もろくに覚えていないのであった。それでも雰囲気くらいは味わえたんじゃないかと思う。チュートリアルシナリオではなく、フルコンクエストを3ラウンドだけやることにしたのも正解だった。チュートリアルだとタイルが順番に出てくるのでろくにレベルアップできないのだけど、ランダムなら強敵を上手く倒せれば速攻で強くなれる。3ラウンド目開始時には皆レベル3だったし、このまま6ラウンドやれば、Cityもすべて落とせたんじゃなかろうか。

PvPを入れなければインタラクションは場所の取り合いくらいしかない。上達すればこの取り合いがかなり熱いわけだが、それまではソロプレイ感覚が強い。そしてPvPを入れるのは、相当慣れてからでないとおすすめできない。なので3人以上のプレイはゲーム時間を延ばすだけになりがちで、やはり2人がベストだろう。



ロビンソン・クルーソー:呪われた島の冒険

(Robinson Crusoe: Adventure on the Cursed Island)


ポーランドの雄、Portalのエッセン2012新作。作者はここの主力デザイナーであるIgnacy Trzewiczek。『51番目の州』、『プレタポルテ』、『コンヴォイ』のひと。これらと同様、このゲームも特殊カード大量で要素が多くてごちゃごちゃしてて、いろんなところが不親切だ。それでも初期のものに比べたら、ルールライティングは相当解りやすくなった感を受ける。

制作発表時、協力ゲームに不可避的についてくる「奉行問題」をついに解決しましたと謳っており、孤島サバイバルの個人的琴線テーマともあいまって、期待に胸をふくらませていた。ところがいざルールを読んでみると複雑ではあるのだが骨子は普通の協力ゲームで、「奉行問題」を避けているというのはまさか「紛糾したときはスタートプレイヤーが決定する」ということではあるまいなと思いつつもそれ以外に見当たらず、そうだとすればもう余り魅力も感じられなくなってしまい、興味をほぼ失っていた。だがゲームはやらねば始まらないのであり、お誘いを受けたのを良い機会に挑戦することにした。タナカマさん、タカタさん、ナガミネさんと。

詳細を説明すると長くなるのですっ飛ばすこととして、要素てんこもりの協力ゲームと考えて外れではない。おまけにシナリオが大量についていて、異なった目標設定で遊べるのでリプレイ価値はかなりある。難易度は最初のシナリオでもかなり高めで、実際目標達成の目処もたたないままにあっけなく敗北した。ToDoが多すぎて手が全然足らない感じで、序盤から綿密に計画を立てて行かなければならない。終了後の感想戦も盛り上がり(良いゲームの条件の1つだろう)、時間の関係で無理だったがすぐさま再戦したくなる。やり込み協力ゲームが好きなひとには文句なくおすすめだ。ただしカードテキストやキャラクター特殊能力はかなり多めで、プレイ時間も初期シナリオで2時間程度かかる。インスト時間も他の重量級ユーロと同程度かかると見たほうが良い。

そして「奉行問題」は回避できていない。ただ前述のとおり要素が多いので、1人が全状況を把握するのはかなり慣れていないと難しく、それがバランサーとして働いている。そうは言っても熟練度があまりに違うプレイヤーと同卓するのは、他の協力ゲームと同じくあまりおすすめできないところではある。ただしこれはプレイヤー個人のプレイスタイルに大きく依存するので、もちろん絶対ではないのだけれど。


センチネルズ・オブ・ザ・マルチバース(Sentinels of the Multiverse)


オビ湾卿、たむらさん、ナガミネさん、タカタさん、COQさんと。

こちらも協力ゲームだが、「奉行問題」がどうのとか、そーいうのはどうでもいい系。アメコミヒーロー大集合世界(といってもマーベルとかじゃなくて、独自アメコミヒーロー)を愛するひとのためのゲームだ。Characteristics of Gamesで奉行回避手法の1つとされているロールプレイを採用した作品と見なせるわけだけれども、そこから愛の足りない私がどうのこうのとしゃらくさい論評を加えても何にもならぬ。愛がほとばしっている以下の記事を読み、その強度にただ震えるべきだ。

ビッグバントーナメント第三十八夜~マルチバースを覆う影

紹介:センチネルズ・オブ・ザ・マルチバース


スカイライン(Skyline)


値段を度外視すれば、悪くないフィラーダイスゲーム。ロールに気合が入るし(ダイスは念じてなんぼでしょ)、15分で終わるし。ダイスの視認性が悪いのが遺憾。


キーウッド(Keywood)


1995年発売の、キーシリーズ第1作。たびたび「やりたいやりたい」と言っていたら、ボードゲーマーにとって「宝物庫」という比喩がぴったりの、moonさんのゲーム倉庫でプレイさせてもらう機会を得た。感謝の念にたえない。

かろくさん、ふうかさん、moonさんと。
ちょっとしたルールミスがあったため、詳細は次回時に。ただこのゲームの主要な特性であると思われる「どろどろ村社会感」は十分に味わえたので、とても満足。


レガシー:時の歯車(Legacy: Gears of Time)


得点計算がかなりめんどくさいことを除けば、やはり良質なゲーマーズゲームと言える。カード構成を把握すれば7並べ的カード止めも容易であり、他のインタラクションも相当に濃厚なので、結構マルチ的な感じだ。そういえば鉄道経営系ゲームを好むひとがこれをほめているのを散見するが、確かに意外と似ているかも。

2013年2月13日水曜日

Sixteen Thirty Something (6人ワレス会)

仙台のぽちょむきんすたーさんの上京に合わせ、過去5、6回ほど行われてきたワレス会だが、ここ半年ほどご無沙汰となっており、メンバーの欲求不満もやばいところまできていて、このままでは犯罪者を生み出しかねないということで、急遽実行されることと相成った。それも6人会なので、ここは数年前にeBayで入手し、サマリーまでつくっていたものの、やる機会のまったく見い出せなかったこのゲームを投入するに絶好ということで、半ば無理矢理押し込んだのである。


Sixteen Thirty Something...



Warfrog1995年作品。The Martin Wallace Ludographyによれば、彼の2作目であるらしい。このリストでは処女作となっているLords of Creationが、BGGを見るかぎり「およそワレスらしくない」作品とされていることを鑑みれば、実質的な第1作と言えるのかも知れない。ほとんど同人のようなものだった(よく知らないが)当時のWarfrogらしく、コンポーネントは非常に簡素なものだ。ボードは単色で、カードは白黒、コマの類も実に安っぽい。

ルールは後のStruggle of EmpiresやAge of Reasonの原型であるのだろうと思わせるもので、SoEを簡略化したものがAoRだとされているが、これはもっと単純だ。舞台は題名のとおり1630年代のヨーロッパ、つまり三十年戦争の真只中である。プレイヤーたちはこの戦乱の時代を駆ける主権国家のうちからひとつを選択……しない。1国につき2枚の国タイルを、準備時に3枚ずつ分配することで、プレイヤーたちはゲームに登場する9ヶ国を秘密裏に担当する。イギリスはAとBの担当、フランスはBとCの担当、ドイツはAとCの担当……等々ということになる。各ターン終了時、プレイヤーは自分の担当国の国力(およびその国に対する自分の影響力)から勝利点を得る。AとBはイギリスの国力を伸長させたい、しかしそのためにフランスに攻めこむのはBとしては避けたい。だがそれをあからさまに主張しては、自分がフランス担当だということがばれてしまい、いろいろと不利になる……。こうしてマルチ的政治による欧州情勢はより複雑怪奇度を増していく。



ゲームは(大抵)10ターンにわたって行われ、各ターンでプレイヤーたちは1回ずつ手番を行う。手番での行動は以下。

  1. 下向きになっている場札から1枚を除去
  2. 手札3枚までを1人と交換(任意)
  3. 特殊カードを2枚までプレイ
  4. 投票
  5. 手札制限数まで捨札

それぞれを詳説していこう。

1. 下向きになっている場札から1枚を除去
このゲームでは、各国の行動は投票で決定される。この投票の「票」となるものが、プレイヤーが自分の場に出している国カードである。国カードは当然だが9ヶ国分あり、1から3までのランクがついている。これが自分の前に各国別の列になってプレイされていく。たとえばあるプレイヤーの場にはイギリスの国カードが1、3、2の列で6点=6票分、フランスの国カードが2、3で5点、スペインの……というように。ところが何らかの効果により、このカード列が逆向きとなることがあり、こうなってしまうともうその列にはカードが出せなくなる。つまりその国のカードをこれ以上プレイできなくなってしまう。そして毎手番の最初に、プレイヤーは下向きの列から1枚の国カードを捨札としなければならないのだ。ただし下向き列が複数ある場合は、それら全体から1枚だけを除去すれば良い。こうして列が消えてしまえば、またその国のカードをプレイ可能となる。これは影響力の減衰過程を表している(プレイ中は老害と言われていたが、当たらずも遠からずだろう)。

3. 特殊カードを2枚までプレイ
このゲームはどろどろ政治ゲームであると同時に、手札マネジメントゲームでもある。強力な特殊カードの使い処を間違えると、無残なことになっていくだろう。国の戦闘力を高める、任意の場札を捨札にする、任意の国を不穏状態にする等、どれも実に有用だ。

4. 投票
これがこのゲームの肝と言える。手番プレイヤーは任意の国(ただし自分が影響力を持っている国)を選択し、議題を発案する。議題は基本的に「陣営変更」か「戦争」のどちらかだ。三十年戦争期に似つかわしく、各国は赤・青の2つの陣営に分かれている。おなじみの、赤は青にしか攻め込めない、逆もまた然りというやつだ。なので叩きたい相手が同陣営の場合、まずこちらの陣営を変えなければならない。勝利点のもととなる国力は、戦争で勝って相手国から奪い取るのがメインの獲得法なので(よって全国家の総合国力はだいたいゼロサムだ)、戦争はとても魅力的だ。だが攻めこんで負けた場合は、反対に相手に国力を奪われてしまうのであるが。国を動かすのはその国の担当プレイヤーではなく、あくまでも票数による多数決である。これにより、非担当弱小国の票を多く出しておいて、その国を自分担当の強国に攻め込ませ、国力を献上させるという悪辣プレイも成り立つ。戦争の解決は2つのダイスの差分が大きいほうが勝ちという後にも踏襲されたもので、軍事力等による修正がつく。

手番プレイヤーが国と議案を決定したら、各プレイヤーはその国のカードを好きなだけ場にプレイする。国カードをプレイできる機会はゲーム中ここしかない。全員がカードを出すかパスするかしたら、議案に賛成か反対かを握り競り方式で出し、票数による多数決で可決・否決される。そして、このとき負けた側に投票した者は、その国の場札が下向きとなってしまう。このため影響力保持のための阿諛追従プレイ、他列の除去を避けるためにわざと敗北投票を行って下向きにする暗躍プレイなどが頻発するが、たまにはどう転ぶかわからない決戦投票が起こったりもする。

画像はBGGから。
手番が1巡したら得点計算を行う。自分の担当する国ごとに、「その国の国力」と「その国への自分の影響力」を比較し、「低い方」が得点となる。たとえばフランス担当で、フランスの国力が5、影響力が3なら、勝利点は3点だ。これを手持ちタイル3枚分行い、合計したものがこのターンの勝利点となる。この勝利点申告によって、プレイヤーの担当国がだんだんと明らかになっていく。そしてスタートプレイヤーがうつり、勝負は次ターンへと続く。もし終了ターンが8ターン目だったらダイスロールが行われ、1が出たら即ゲーム終了となる。同様に9ターン目の終わりに1か2が振られても終了だ。終了しなかった場合、10ターン目が完結したらゲーム終了となる。昔のゲームでたまに見かけるこの終了条件は、多人数マルチの「いつトップ目に飛び出すか」問題に、荒っぽいかたちでジレンマを加えたものだろう。

この部分だけではなく、このゲームはいろいろと「荒っぽい」。いわゆるマルチ的配慮が必要なゲームのなかでも、その要求度がかなり高い部類だ。しかし簡単明瞭なルール、1ターンで情勢が激変するダイナミクス、複雑政治状況のなかでのどろどろ交渉の魅力は、まさにこの荒さから生まれているものだとも言える。


6人会でなければ投入できなかったのは、このゲームがほぼ6人専用だからだ。それ以外の人数だと1人だけが担当する国家がでてきてしまい、そのプレイヤーの勝利はほぼ確実に無くなってしまう。加えてBGGのコメント等を見れば解るように、添付のルールをそのまま適用すると、ほとんど破綻したゲームになってしまう。具体的に言うと国カードをいくらでも出せてしまうので、単純なカード引きゲーになってしまうのだ。これを修正するものとして、PG:DBにヴァリアントが紹介されている。これは「1国に出せるカードは1プレイヤーにつき7点まで」「手番終了時、『場札と手札を合わせて』13枚まで捨札」という実に簡単なものだが、適用してみたところ効果は抜群で、カード引きゲームがカードマネジメントゲームに生まれ変わった感すら受ける。

他にもBGGにはファンのつくった2版ルールがあり、ドロー枚数変更や手札制限変更に加え、イタリアの導入(国タイルや国カードが増える)や捨札のピックアップなど、大幅にリファインされている。私は上のヴァリアントで十分満足できたので、わざわざカードやタイルを自作してまで(ファイルはすべてBGGに上がっている)プレイしようとは思わないが。





さて、ワレス会である。
ぽちょむきんすたーさん、A葉さん、かろくさん、ふうかさん、たむらさんと。

第1ターンはほぼ各国の陣営決め(ゲーム開始時は全ての国が、どの陣営にも加入していない)で終わり、得点計算へ。ところがA葉さんの得点が異様に高い。場札と各国の国力(ゲーム開始時は不均等であり、ハプスブルクは5点だが、イギリスは1点だったりする)が比較され、担当国3つのうちの2つはドイツであることを看破される(ドイツの国力は5点。2枚持ちならそれだけで10点だ)。そして始まる対ドイツ大攻勢。2ターンの時が経ち、大げさではなくドイツは廃墟となる。やはり同一国家2枚持ちは相当に辛いものがあるので、次にやる機会があったらタイルドラフトを入れたほうが良さそうだ。

ドイツの次に覇権を握ったのはスペイン。ここは私の担当国でもあったが、確かに点が高すぎる気もしたので静観。しかしこれが第一の間違いだった。落ち込んでいく速度はとんでもないものがあり、静観などしていたらあっという間に焼け野原となってしまう。そして国力0と化した国土を復興するには、途方もない労力を使うのだ。ここはばれてもいいから陣営をとっとと変え、弱小国程度の位置で停止させるべきだった。

スペインが落ちぶれたあとは大英帝国が伸びた。ここはたむらさんが2枚持ちだったのだが、最初は国力1点なので目立たず、スペインがたこ殴りに合っている間に軍事力を高めてそうそう手を出せなくし、満を持して表舞台に登場するやいなや死に体のスペインからダイスロール無しで(修正を入れると絶対勝利)国力を2奪うという極悪非道な技を見せた。

しかしやはり1人で1国担当は辛いものがあったのか、不穏カードや暗殺カードが飛び交い、さしもの帝国もゆっくりと瓦解していった。その間隙をぬい、スペイン担当に見せかけて実は担当していなかった(私のスペイン援助が遅れたのはこのせいでもある)ぽちょむきんすたーさんが抜けてきた。スペイン没落で点が下がるだろうと思われ、静観されていたのが著しい伸長を見せたのでついに露見したのである。しかし私の恨みを込めた暗殺者が放たれ、強国フランスへの影響力が消失してしまった。

こうなると強いのは目立たない中堅国家を複数手中に収めている人、もしくは強国担当であることはわかっているのだが勝利点をあまり稼いでいない人である。前者の代表はふうかさんで、後者の代表はかろくさん。勝利点マネジメントが冴えわたっている。


私はどうしていたかというと、スペインが壊滅したせいで得点源の3分の1を失い、それならばとハプスブルクの軍備を補強し、他国への侵攻作戦を試みた。同国担当のふうかさんと連携し4回連続で軍勢をさしむけたのだが、これがすべて返り討ちにあって国力を献上し続け、哀れハプスブルクは4等国家にまで落ちぶれてしまった。しかしダイス運だけに敗北を語らせるわけにはいかない(確かに悪かったけれども)。そもそもこのような作戦を実行せざるを得なくなった段階で、私は負けていたのである。スペインを助けるべきだったし、もう1つの担当国のポーランドを序盤から育てておくべきだったのだ。はっきりと、グランドデザインレベルでの敗北である。

そんなダメプレイヤーのことはどうでもいいとして、ゲームは8ターン目が終了。ここで1が振られれば、斜陽国家イギリスが最後の意地を見せて勝利、だったのだが出ず。9ターン目にはふうかさんが走るが、1、2は振られず。緊迫の10ターン目は、かろくさんが僅かの差でかわして勝利となった。お見事でございました。


プレイ時間はインスト込みで5時間半ほど。メンバーに恵まれたのもあるが、正直予想を大きく超える面白さだった。ふうかさんの言葉を借りれば、まさに「飽きないダレない面白い」だ。この1回で終わらせるのはもったいない、実にもったいない、もったいなさ過ぎる。1年後か、2年後か、いつになるかは分からないが、必ずまたプレイするだろう。

2013年2月12日火曜日

イタリア・ロシアゲーム会

イタリアのGiochix.itと、ロシアのRight Gamesの新作を遊び倒そうという贅沢な企画。だったのだが、私の準備が間に合わなかったせいで前者のGladiatoriは次回まわしとなった。どうもすみません。

ふうかさん、かろくさんと。

CO2


大量破壊兵器いちゃもん侵攻ゲームOne More Barrelに見られるように、Giochixといえばニッチなテーマである。初期作品のMedivaliaは怪ゲームの名をほしいままにするできだったが、最近のRio de la PlataやUpon a Salty Oceanの評判はどれもまずまずといったところで、着実な地歩を業界の一角に築いている。しかしここのリードデザイナーであるMichele Quondamというおひとはルール改訂大好きデザイナーであり、とくにRio de la Plataのバージョンアップぶりはフィル・エクルンドを思わせる凄まじいものだった。そういう点も含め、数寄者向きのパブリッシャーと言えるだろう。

デザイナーはヴィニョスのVital Lacerda、テーマはCO2削減に向けたクリーンエネルギー発電所の建設となればつまらない筈はない、と考えるのが自然だが、3人プレイを2回やった結果、少なくとも3人時は、最終得点が恐ろしく大味であることがはっきりした。

地域のCEP(炭素排出権)は終了時に支配プレイヤーのものとなり、すべて売却できる。最後の手持ち資金は2金で1点となるので、アジアとヨーロッパを支配していて、CEPの相場が最高値だった場合はこれだけで44点となり、発電所3-5基分の勝利点を得ることになる。3ラウンドあたりからは収入も相当に大きいので、資金に苦労することはほとんどない。しかも残しておけば勝利点になるのだから、最終得点は非常に大きなものとなる。毎ラウンド入る収入は勝利点と資金に振り分け可能なのだが、資金は前述のように勝利点に変換できるし、資金を元手に発電所を建てれば点が得られるので、悩むくらいなら全てを資金にしておけばよろしいわけで、余り意味のないものになってしまっている。

収入は各専門知識トラックの1位と2位だけが得られるのだが、トップが同マスにいた場合は両者とも1位と見なし、2位マスにいる者たちも同様に2位と見なす。なので3人プレイの場合、あるトラックで無収入なことはほとんどない。これが資金をだぶつかせる要因となっている。恐らく4人以上のプレイなら、専門知識トラックの競争も激しくなるし、支配できる地域も少なくなるので、上記の問題はかなり軽減されるのではないかと思う。

だが、これは声を大にして言っておきたいのだが、プレイ中は実に楽しいのだ。特に2回目(つまり今回)の、最後にはこうなるだろうと予測がついているときでさえ、2時間のプレイ中はだれることもなく、プロジェクト導入の我慢比べ(発電所建設プロジェクトを導入しないと建設できないのだが、自分が導入すると他人に建設されてしまう)で脂汗を流したり、サミット参加で協力し束の間のウィンウィンを楽しんだりしていた。なので1度は4人で試してみたいゲームだ(BGGでは5人プレイの評価が異様に低いので、また別の問題があるのだと思われる)。

最後に、今回のために作成したサマリー(といってもBGGにあったものを和訳し、FAQの情報を適宜加えたくらいの簡単なものだが)を上げておくので、欲しい人はどうぞ。

CO2日本語サマリー


総督の船(The Doge Ship)


多分、今回やったもののなかでは一番「ゲームっぽい」のがこれ。目的は船パーツカードを購入し、それを建設して勝利点を稼ぐこと。毎ラウンド最初にスタートプレイヤーがダイスを振り、対応色トラックに置く。あとは手番順でワーカープレイスメントをしていくのだが、ダイスより左のアクションマスは無料で使え、右方は1マス遠くなるたびに1金を払わねばならない。当然右のアクションほど強いものが多い。

特殊能力/手番順決定/災害対策に使うタイル(たくさん持っているほど災害対策には強いが、スタックの一番上のタイルの能力しか使えない。強い能力のタイルは手番順が遅くなってしまう)がいい味を出しており、さまざまな要素を勘案してアクションを決定していくのが実に「ゲームっぽい」。Giochixの今期作品のなかでは最も地味なため、そのまま埋もれてしまいそうなのが、ちょっともったいないと思わせる佳作。


日本の城(Japanese Castle)


ここからはロシアのRight Games2012年新作を怒涛の三連発。Right Gamesといえば2010年の『エヴォリューション:種の起源』であり、これが好事家が愛でる以外の要素を全く持たないダメダメなものだった記憶が蘇り、始める前から戦々恐々である。ホビージャパンがここの新作を扱うとの報に接したときは、ついにご乱心めされたかと思ったほどだ。

で、これ。写真を観ればわかるようにカードを組み立てるデクスタリティ系。問題は、いくつもあるルールのほとんどが3階以上の建設を前提として要求しているのに、どんなに頑張っても2階くらいが精一杯というところ。

恐らくこのゲームの使いみちは、ゲーム会場の隅の卓に置いておき、あぶれた者や手持ち無沙汰な者の手慰み用にするのが良いんじゃなかろうか。1年も経てば10階以上も余裕でこなす猛者が大量生産されているに違いない。


シノビ(Shinobi: War of Clans)


正体隠匿で、ゲーム終了時に自陣営のカードが場に最多の者が勝ち。山札が切れたらそこから1巡して終わりなのだが、そのころには相手陣営もほぼ判っているので、当然のごとく最終手番者が強い。しかしそこはマネジメント不可能なわけでもないので、十分許容範囲だろう。とにかくEvolutionのパブリッシャーがこれほど「ゲームっぽい」(また言ってるが)ものを出してきただけでも感動ものだ。


ジャム(The Jam)


セットコレクション。各カードには使い途が2種類あり、レシピとして使うか(上部)、材料として使う(下部)。カード絵は素晴らしく(『サンドイッチ』のまずそーなあれとは天と地だ)、空腹時にやると口の中にジャムの甘酸っぱさがひろがってきそう。

しかしカード種類が多すぎて、確認が恐ろしく大変なのが痛い。場にはだいたい10枚前後オープンされており、手札は常に5枚。しかも大抵は違うカードだ。カード毎に2つの情報があるので、人間の処理能力を超えそうな情報量を手番で処理しなくてはならない。当然ダウンタイムは長くなる。しかしEvolutionのパブリッシャーが(以下略)。



というわけで特に後半は地獄ロードを覚悟したが、どれも肩すかしなほどに十分遊べるもので、歴史は常に進歩するものなのだなあと、私たちは感慨にふけるのだった。まる。

2013年2月10日日曜日

グレートジンバブエ会とか

未記録のゲーム会がいつのまにやら溜まって行き、もはやイタチごっこの様相を呈しております。というわけで3回分(むしろ2.1回分)をまとめて。

銀杏都市(Ginkgopolis)


つなきさん、たむらさんと。トロワのパールゲームズ2012年新作。解りにくいという評判をよく聞くのでルールを熟読玩味していったがやはりよく解らなかった。個々のメカニクスは難解ではないのだけれど、そのつながりが把握しづらい。テーマも理解に貢献しているとは言えず、たとえば「建設」でタイルを重ねたときに、置いたタイルの下にあるタイルの効果を得るというのはやはり直感的ではない。

だけど直感的でないとかテーマが合ってないからといって悪いゲームというわけではなく、最初のハードルがちと高いというだけの話。それを越えてシステムを把握できれば、なんとも独特なプレイ感が味わえるのはたしかにトロワを思い起こさせる。と言いつつ2回目をやれてないのだけど。


グレートジンバブエ(The Great Zimbabwe)


つなきさん、たむらさん、ナガミネさんと。重ユーロゲーマー御用達、オランダ変態集団スプロッターの2012年新作。上と同じでこいつも解りにくいのだけど、その依ってきたるところが異なり、メカニクス連関はむしろ解りやすい部類。問題はAとA’というよく似たアクションがあるとして、Aでは金を払わないがA’では払います、といったシステム的要請による複雑化が多いところ。「これは中継できるんだっけ?」とか「これはこの資源をつぶすのでしたか?」とか、最終ラウンド一歩手前まで完全理解かなわずに質問だらけという体たらくだったのは、恐らくわたしの頭のできだけの問題ではない。

だけど(中略)悪いゲームというわけではなく、むしろこの濃厚過ぎるほどのインタラクションは他作品ではそう味わえないもので、泥くさい魅力を芬芬に放っている。システムは一見陣取りのように見えて、ネットワークビルディング+輸送といった方が良く、同社のインドネシアを想起させる。それでいながらスプロッターにしては短時間で、2時間もかからないのも素晴らしい。これまでやったエッセン2012作品では、個人的には3指に入る(ぼろ負けしたし、今後も勝てるとは到底思えないが)。……あとはもう少し安ければなあ。


サッターズミル(Sutter's Mill)


つなきさん、ナガミネさんと。エッセン2012で投げ売りされてたのでふらふらと買ってみた、ファランクス2008年作品。サッターズミルというのはゴールドラッシュ発祥の地で、そこに人が雲霞のように押し寄せ、金が枯渇したとみるや我先に去っていき、街はゴーストタウンとなる。その経緯がテーマとなっている。

人が集まるところが第1フェイズで、ワーカーを置いて金を掘ったりカードを置いて効果を競ったりする。第2フェイズでは金を掘るところは同じだが、ワーカーやカードを置く代わりにボードから取り去る。金が無くなったと同時にゲーム終了で、このときボードに残ったワーカーとカードはマイナス点となる。面白いのが、第1と第2フェイズをプレイヤーが個別に切り替えられるところ。なるべく遅くまで居残ってカード効果等を有効活用したいが、脱出タイミングが遅れると大量のマイナス点をくらってしまう。

ゲームは1時間もかからないし、上記要素も新鮮なのだけど、どうも現在状況(自分がどの程度の位置にいるのか)がいまいちわかりにくいところが惜しく感じる。数回まわせば違うのかも知れないが、箱がでかいので持って行きにくいのも惜しい。


ここから別会。

ナッツ(Auf die Nusse! )


タナカマさん、タカダさんと。AMIGOの2012年新作で、作者のMichael Feldkotterはジュピターのもとにとかテネキーのひと。

端的にいえばキャントストップ+セットコレクション。もとがキャントストップなので、バーストにおびえながらも果敢にダイスを振るのは実に気持ちが良い。しかしそれとセットコレクションの連関が少々気になった。というのも、どうしてもこのカードが欲しいからという理由でのダイスロール続行はほとんどなく、なんでもいいから枚数が欲しいというロールが大部分だったからで、キャントストップは山頂早い者勝ちなので強烈なインセンティブが存在するのだが、こちらだとオールマイティカードの存在もあって、なにがあってもこのカードを取らねばならぬ、そのためには確率が劣位であっても続行するぜ、というのが非常に少ない。

なので少々ちぐはぐな感じというのが第一印象だが、終盤でこのカードをとれば30点、とれなければ5点なんてケースなら当然ロールしまくるだろうから、大きなセットを目指さなかったのが原因なのかも知れない。


ここから別会。

CO2


たむらさん、つなきさんと。イタリアのGiochixの2012年新作。実はこの後もう1回やったので、詳細はそのときに。第一印象は皆同様で、得点がひっじょーに荒い、大味なゲーム。でもプレイ中はなんか楽しい。


MURA


3人専用国産カードゲーム。80年代のシューティングのようなアートワークがナイス。ルールはちょっと天九に似ているが、切札があって、ラストトリックではなく取った枚数が得点。親がプレイ枚数を言ったら全員が同時に裏向きでプレイし、親から順番に表にしていく。ただし勝っていないカードは裏向きのまま捨てられる。非公開カードのおかげで律儀なカウンティングも必要なく、プロット式なのでちょっとしたブラフ要素もあったりし、延々だらだらとやりたくなる魅力を持っている。



スクウェアオンセール



2005年ヒッポダイス1位獲得の国産ゲーム。中盤に至ってさえ、誰が勝っているかすらわからない恐ろしいゲーム。各自の残り資金、残りタイル、ボード現状をすべて勘案して状況判断しなければならず、頭が沸騰しそうになる。しかしインタラクションが豊富なため、いくら精緻に詰められたとしても、結局のところ一寸先は闇とも言える。このぼんやりした布石感覚と、(特に終盤の)犀利さとの対照が、マルチゲームの特質を先鋭化したかたちで表現している。

しかしこれはわたしの頭には難し過ぎたらしく、遊ぶというより鑑賞する気分になってしまった。これを「遊ぶ」にはいろいろな意味で修練が必要だ。

2013年2月6日水曜日

ビッグバントーナメント 第37夜

ちんたらしていると第38夜が来てしまうので、慌ててこれを書くのだ。

いつもの通り詳しくは主催者様のここを参照。
ビッグバン・トーナメント第三十七夜~2013冬

ライズオアフォール(Rise or Fall)


要は多人数じゃんけんのようなもの。各プレイヤーは他陣営色+防御+得点のカードを持ち、1枚をプロットして同時公開する。他陣営色を出して、相手が防御していなかったら相手からチップをもらえる、得点カードを自分だけが出していたらチップをストックからもらえる等々。最後の2陣営になったらチップを公開し、多い方が勝利。単純にもほどがあるほどに単純だが、回を重ねるにつれて少しは文脈や政治じみたものが滲み出てくる。

そしてなによりテーマが良い。各陣営はジョック(いわゆるスポーツマンの好青年)とかクイーンビー(上位チア)とかパンクとかナードとかゴスとかで、こいつらがスクールカーストの上位を目指すというのが背景なのだ。といってもナードならこんな能力があるぜとかは一切なく、皆が同じカードを出すだけ。潔い。

バカゲーの見本というべき簡素なつくりに職人芸を見た逸品。アメリカから買うときの送料合わせにどうぞ。


ガントレットオブフールズ(Gauntlet of Fools)


ヴァッカリーノの裏の顔、いやこちらが表の顔か。DominionやKingdom Builderではなく、NefariousやInfiltrationの路線だ。

まずテーマが良い(BGGにあるヴァッカリーノ自身の投稿によると、テーマ先行のようだ)。うぬぼれた冒険者たちが「俺はこんなハンデを負ってもあんな迷宮くらい余裕だぜ」といいつつ手枷足枷を自らに加えて迷宮に突撃し、哀れ全員が屍となる。しかし最も多くの金を稼いだものは、その栄光がしばし語り継がれるであろう、というような。素晴らしい。

ゲームは2つのフェイズに分かれ、前半では各プレイヤーが担当冒険者を決定する。冒険者はプレイヤーと同じ数だけ場に出、それぞれに武器カードがランダムで1枚ずつ与えられる。この組み合わせを見て強そうなペアを取っていくわけだが、他プレイヤーがすでに取ったものを奪ってもよい。しかしその場合、「うぬぼれ」カードを奪う冒険者に付け加えなければならないのだ。「俺は片足とびでも余裕だぜ」とか言いながら。こうして人気の高い冒険者には大量のハンデすなわちうぬぼれが溜まっていき、鼻高々状態となる。いかにも慢心した人気者という感じだ。しかしそこまでくると、まだ場に残るうぬぼれなど全くない初々しい、しかし弱っちい冒険者にもそろそろ目が向いてくる。こうして全員の担当が決まったら、ゲームは第2フェイズへと移る。


かつてPC98時代、マッチメーカーというソフトがあった。各プレイヤーが自分の機体のデータをつくり、それを闘わせるというもの。Windows98のころ(確か)には、グラフでボクシングというゲームがあった。ランダム生成されるボクサーを使用し、世界チャンプを目指すもの。iOSにはゆけ!勇者というゲームがある。装備を整えてダンジョンに勇者を送り出す。

これらに共通するのは、本番は自動処理だということだ。プレイヤーにできるのは準備だけで、あとはコンピュータの処理を見守るだけ。これはデジタルだからこそできるものだと、普通はそう思われている。一般にボードゲームで多くの自動処理をさせることは嫌われがちである。その間はプレイヤーによる判断が排除されるからだ。

だがこのガントレットオブフールズは、自分の選んだ冒険者がダンジョンに潜ってからは、つまり第2フェイズに移ってからは、ほとんどが自動処理なのだ。デッキからめくられるモンスターに対処していくのだが、自由度はほぼないと言える。特殊能力の使いどころに判断が求められるくらいだ。

しかし、この冒険者をただ「見守る」感覚がなんとも言えなく良く、映画の後日談を観ているような、そんな気分になる。だがこの良いというのはコンピュータゲームの文脈に立った上で「良い」と感じているのかも知れず、合わないひとには強烈なまでに合わないだろうことはPG:DBを見ればわかる。なんにせよ、試してみる価値はある。ただテキスト確認の必要上、6人はちょっと多いかも知れない。


エレメンツ(Elements)


カサソラ・メルクル1997年作。実はかなり繊細なゲームであり、それを味わうには前2本の荒々しさがマイナスに働いたと言える、かも。

2013年2月5日火曜日

指輪戦争会

指輪戦争(War of the Ring)



私はゲームに点数をつけるということをほとんどしない。理由は単純にめんどくさいからだが、加えてどうせやるからには整合性をもたせたいなどという自己満欲求が働いて、そうなると相対評価では正規分布を描くように採点していきたいし、絶対評価にするなら評価軸を定めておきたいし等々でめんどくささが倍増し、もうどうでも良くなるというわけだ。

もし私が点数をつけることに勤勉であったなら、このゲームは間違いなく数少ない10点ゲームの1つとなるだろう。10点というのはなにか特別で、数直線を超えたところにあるような感じがするものだが(虚数のようなものか)、つまり個人的な感情や感傷や感動が含意されてはじめて10点になるのではないかと、点数付けなどしないくせに思うのだが、そういう意味でもこれは私にとって10点ゲームなのだ。


プレイヤー2人(3人以上でもできるがそれは蛇足だ。このゲームはほぼ2人専用ゲームである)はサウロン側と仲間側に分かれ、異なる勝利条件を目指す。特徴的なのはこの勝利条件が各々2つずつあることだ。サウロン側は指輪所持者を堕落させるか、相手支配地を10点分占領する。仲間側は指輪をはるばるモルドールまで持って行き火口に投げ捨てるか、相手支配地を4点分占領する。どちらに力を割くかはプレイヤー任せだが、一方に注力しすぎると片方が疎かになってやられてしまう。このリソース配分の妙が言いようもなく面白い。最終盤では危険を予知しながらもある種の賭けに出ざるを得ない状況になりがちで、そのスリリングさはまさに指輪物語を地でいっており、これほどテーマとシステムが合致したゲームもそうはないだろう。

行動のリソース配分は完全に自由意志で行えるものではなく、毎ターン両プレイヤーはダイスを複数個振り、それを手番に1個ずつ消費してアクションしていく。当然出目に対応したアクションしか行えないので、相手支配地を攻め落としたくとも、その目が出ていなければ行動できない。

しかしダイス任せの運ゲーとも言い難い。全体的なリソース配分(大局観)を、現在状況と自分および相手の出目を考慮しつつ変化させていく。現在の出目だけを考えていては勝てないし、出目を無視していても、もちろん勝てない。タクティクスとストラテジーの噛み合いが、このメカニクスのおかげで十全に機能している。


だがこのゲームは敷居が高い。理由としては
・値段が高い 確かにその通りだ。だが凡百なゲームを2本買うよりは、もし相手がいればの話だが、間違いなくこのゲームは満足感を与えてくれる。
・時間がかかる これについてはプレイヤーの環境によるとしか言いようがない。
・指輪物語を読んでないと辛いのでは? そんなことはない。映画三部作を観ているだけで十分に楽しめる。もし小説まで読んでいたなら、より強く楽しめることは確実だろうけれども。

それに加えて
・フィギュアの視認性が悪いため準備に時間がかかる。
1プレイヤーのフィギュアはほぼ単色であり、このため形の似ているゴンドールとローハンの兵士などは恐ろしく見分けがつき難い。これで初プレイだったら、準備に1時間かかると見ても大げさではない。解決するには国別着色が手っ取り早いが、上写真のように付箋を貼るという力技でも、プレイアビリティは格段に上がる。雰囲気は台無しかもしれないけれど。国別着色の写真を下にあげておく。BGGには美しく彩色した写真が山のようにある。



というわけで徹夜明けナガミネさんと。付箋を貼ってきてくれたのはナガミネさんであり、これだけでも相当大変だっただろうことは想像に難くない。われわれはこんなのカウンターでいいじゃんと言い切ってしまうほどのミニチュア不感症であり、大事なのはプレイアビリティなのだ。

使用したのはAres Gamesの第2版。ルールとカードに少し修正が入っている。そして第2版で使える初の拡張、Lords of Middle-Earthを投入した。これによってガラドリエルやエルロンドが登場する。サウロン側にとってはついにバルログが投入できるのが嬉しいところだろう。

しかしダイスと選択肢も増えるので、ゲーム時間も少しばかり増加すると思われる。実際とくに長考もなかったが、以前は6時間かからずに2度回せた記憶があり(隣卓のシドマイヤーズ・シヴィライゼーションとほぼ同時間で)、今回は準備30分、実プレイ4時間半、片付け15分というところ。

指輪の仲間側を担当。新キャラのガラドリエルとエルロンドが強力だったのですぐさま投入。これでエルフ支配地は落ちにくくなる。また能力違いの灰色ガンダルフも投入し、なかなか戦争をしたがらない北方民を一気に臨戦状態に持っていく。これでサウロン支配下の北方地域を叩き、軍事プレッシャーをかけるつもり。

だが流石に対応され、北部に軍勢が次々と投入される。こうなると防戦一方になるしかなく、方針転換して指輪所持者を進めていく。ストライダーをゴンドールに送り込んでアラゴルン化し、ローハンが落ちるのは仕方がないが、ゴンドールで激戦が行われている間に指輪を溶かす心づもりだ。

サウロン側の南方侵攻が遅れたため(加えて今回は両者ともに出目が酷く、攻めこんでも敗退というのが多かった)、フロドはかなりあっさりとモルドールへとたどりついたが、ここからサウロンの目タイルの猛攻をくらい、仲間が続々と犠牲になって離脱していく。火口に投げ込む寸前にはもはやメリーくんしか伴はおらず、目タイルを引かれたら「指輪は僕のものだ」で敗北となる。確率的には恐らく8割は勝てるだろうということで突っ込んだが、ここで完璧を期して軍事行動を行い、相手に次ターン以降そちらへリソースも割かせるというのはあったのかも知れない。だが防御だけを考えて陣営を組んでいたので、泥沼化する可能性の方が大きかっただろう。

そして目タイルはひかれず、勝利。しかしゲームは最終結果よりも過程である。拙いことばでなんだが、めちゃくちゃ面白かった。4時間半の間、これだけ没頭できる経験など、そう何度もできるものではない。ありがとうございました。次は陣営を交代して、またやりましょう。